研究活動
本研究室では,国土交通から個人のモビリティに至る幅広い領域を対象に,主に解析的・応用経済学的なアプローチに基づいて研究を行っています.具体的には,(1) 旅行時間信頼性の経済評価と運用,(2) 自動車保有と利用に関する計量経済学的分析,(3) 歩行者挙動の計量経済モデルと効率的なデータ獲得アルゴリズムの開発,(4) 不確実性下での最適な経路誘導アルゴリズム,(5) 都市鉄道遅延の数理的研究,(6) ビッグデータ時代の交通調査と需要予測モデル等の研究に,近年は力を入れています.
代表的なプロジェクト
プロジェクト評価・費用便益分析
交通プロジェクトの経済評価において最も大きなシェアを占める「時間短縮便益」に関して,その貨幣価値原単位である「時間価値」について,理論的・実証的な研究を行っている.さらに,旅行者が平均旅行時間によって測られる速達性の向上のみならず,定時性(旅行時間信頼性)の向上にも大きな価値を見出すという側面にも着目し,その経済便益を適切に計測して事業評価に導入可能かどうかについても研究している.
地域間・全国レベルでの交通流動分析
全国を対象とした広域的・巨視的な観点からの交通政策分析として,自動料金収受システム(ETC)が高速道路交通需要に与えた影響の分析や,交通手段分担を考慮した地域間旅客需要のマクロ統計分析などを行っている.また,国土交通省道路局がここ数年来継続的に行っている全国の世帯を対象とした自動車保有・利用の動向調査の設計に初期の頃から携わり,そのデータを用いて,我が国の自動車保有・利用の動向の長期モニタリングや行動モデルの構築に取り組んでいる.
都市内レベルでの交通流動分析
主に東京都市圏を念頭に置いた都市内レベルあるいはそれよりもミクロなレベルでの分析を行っている.具体的には,次期首都圏鉄道網計画のための都市圏鉄道需要予測モデルの高度化・精緻化のための研究,都市鉄道の相互直通運転と列車遅延現象に関する数理的分析,交通ビッグデータを用いたアクティビティモデル分析等を近年の研究テーマとして掲げている.さらに,駅構内等の混雑空間を対象に,同画像処理と離散選択モデルに基づいた歩行者挙動モデルの構築及びシミュレータ開発に長年研究室として取り組んでいる.さらに近年では,開発途上国における次世代交通システム導入の意向分析を新たに開始し,フィールドを拡げている.また,旅行時間信頼性に対する道路利用者の観点からのシステム開発についても近年重点的に取り組んでいる.
国土強靭化のための計画理論
平常時のモビリティの分析のみならず,非平常時,特に,地震防災の観点からの基礎的な計画論についても取り組んでいる.具体的には,計画停電が首都圏鉄道ネットワークの利便性に及ぼした影響の数理的分析,自然災害とマクロ経済成長の長期動学分析,電力供給ネットワークの脆弱性分析など,従来の交通の観点にとらわれずに,幅広い分析を行っている.